筆の動く儘に

妄想と創作の狭間を漂流する老人のブログ

信号待ち

各駅停車しか止まらない小さな駅。時々僕はこの駅を利用する。駅の利用というのは乗車あるいは下車する事だが、僕にとってのこの駅は乗車するだけの駅である。
かつては賑やかだったんだろう駅前の商店街も寂れてしまっていてシャッターが降りたままのお店もちらほらある。
そんな商店街を抜けると交通量の多い道路が横たわっていてこの交差点を渡れば改札口だ。しかしどういう訳かこの交差点に出くわすと必ず毎回赤信号なのだ。最初の頃はチェッっと思ったりしたが今ではここではこうなんだと諦めている。

 

ある時信号待ちをしていると古い電気屋がある事に気付いた。お店の広さは二坪くらい。ショーウインドウには少し前の最新型のテレビが一台飾ってあるだけでその横には小さな箱が不規則に置かれている。店舗の端っこに事務机がありその机の横には読んだ新聞を入れていく籠がある。この籠はどこかのスーパーの籠に違いなくちょうど半分くらいまで新聞が溜まっている。

今日もやはりここで信号待ちだった。古い電気屋を見るとはなしに見ていたらあの籠の新聞をベッドにして茶色い猫が丸まって寝ていた。事務机には店主らしき老人が座っていた。僕はその老人に微笑みながら猫を指差すと老人は微笑みながら頷いた。無言の会話だけど気持ちが通じたようでなんだかとても嬉しい気持ちになった。

信号が青になった。横断歩道を渡り改札を抜けるとちょうど電車が扉を開けて僕を待っていた。

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