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筆の動く儘に

妄想と創作の狭間で漂流する老人のブログ

音楽と美術とワイン

今日もお一人様ランチ。初めて入る出先で見かけた庶民的なグリル。カウンターだけの八人で満席になる街の洋食屋さん。席に座ると厨房が丸見えだ。七十歳をかなり過ぎたマスターと奥さんで切り盛りしている。
初めてなので一番安いハンバーグとライスを注文した。なんともボリューミーなハンバーグでびっくりした。黙々と食べるしかないのが一人ランチのさみしいところだ。お腹いっぱいで勘定を済ませ外へ出る。お店の外観の写真を撮っているとマスターが出て来て僕に声をかけた。

マスター「見るか?」
    僕「え?」
    マスター「夜の店や」
    僕「見せて下さい」

今食べたグリルにもう一度入りお店の中程にある木の扉を開けるマスター。その後ろについて行くとそこは高級感溢れるレストランだった。
マスターがレストランの奥の小さい部屋を開けるとそこはワインセラー

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「わしの全財産や」目の前にロマネコンティが箱で積んである。それだけでン千万円だ。その計算をした途端僕の頭の中の算盤は壊れた。
そしてマスターのワイン話が始まった。
僕はほんの少ししかないワインの知識でもって一所懸命マスターの話についていき時折あらん限りの知識でワインを語る芝居をした。マスターは「あんた中々ええこと言う」と微笑んでくれた。「ここはわしが六十歳の時にオープンしたんや。壁のレンガはオーストラリア、ステンドグラスはイタリアから取り寄せたんや。今では企業のトップがゆっくりとワインと食事を楽しむために来てくれるようになったんや」

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「夢が叶ったんですね」そう言うとマスターは少し照れているように見えた。

「ええか、音楽と美術とワインが分かれば何処でも通用するんやで。これは世界共通やからな」

僕はマスターのその言葉に「はい」と素直な返事をした。

あとで冷静に考えてみるとなんとも宣伝上手な洋食屋のおやっさんだという事に気がつき一人苦笑してしまった。